ロシアのウクライナ侵攻と国際法
2022年7月4日
2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻を始めて、2ヶ月以上が経過しました。未だに、侵攻は続いており、多くの被害が報道されています。残酷な戦争は早く終わってほしいと思います。法的な問題は、なかなかマスコミでも報道されませんが、ロシアの侵攻は国際法と国際人道法に違反するものと考えられます。今回は、国際法違反の点について知っておきましょう。
国際法とは、国家間の関係を定める条約などのことで、2国間で結ばれるものだけではありません。国連憲章も国際法に該当し、今回の問題は国連憲章2条に違反しているものです。国連憲章2条は、第2次世界大戦の反省を踏まえて、武力による威嚇や武力の行使を一般的に禁止しました。但し、国連憲章は51条において、加盟国に武力攻撃が発生した場合に、国連の措置があるまで、個別的又は集団的自衛権を行使することを認めています。
ロシアは、国連憲章51条を根拠に、自衛権の発動であるから国際法違反ではないといっています。ロシアは、ウクライナ東部にある「ドネツク人民共和国」及び「ルハンシク人民共和国」を国家として認め、これらの国がウクライナから武力攻撃を受けているから、集団的自衛権に基づき軍事支援したというのです。
確かにウクライナは、巨大な軍事同盟であるNATOに加盟しようとし、旧ソ連国のなかでもロシアに次ぐ軍事大国です。しかし、だからといって、現にロシアに武力攻撃をしたわけでもないのに、ウクライナの一部の地域を独立国家と勝手に認めて自衛権を発動するなど、誰が見ても、身勝手な言い分としかいいようがありません。
但し、ロシアも国連安全保障理事会の常任理事国であり、拒否権があるため、国連の対応も不十分なものにならざるを得ません。国際世論により、ロシアの違法性を訴えていくことが重要です。
弁護士 加藤悠史(名古屋北法律事務所)
(「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)