ネットでの誹謗中傷について
2020年10月1日
2020年5月に女子プロレスラーの方がネットでの誹謗中手雄を苦に自殺をしたことを受け、ネットの誹謗中傷の問題に注目が集まっています。
ネット上の投稿は、匿名で行うことができますが、匿名であることをいいことに人を傷つけるような投稿をしてしまうことがあります。特にツイッターは不特定多数の人が見て、反応を示すことができます。ツイッターを止めてしまうことも対処方法の一つですが、仕事で使わざるを得ない場合にはそういうわけにもいきません。
こういった投稿は、人の社会的評判を下げるようなものであれば「名誉毀損罪」や「侮辱罪」、業務に支障がでれば「業務妨害罪」、脅せば「脅迫罪」や「強要罪」などの刑事処罰の対象となる場合があります。 また、民事上の損害賠償をすることができます。
ただ、実際に損害賠償請求をしたり告訴をしたりする場合には加害者の住所、氏名が判明している必要があります。匿名で誰が表現をしたのかわからない場合でも、プロバイダー責任制限法に基づいて加害者の住所を調べることができます。
インターネットの場合には表現が行われたSNSの管理者(例えばツイッター、facebook等)に対して、何時何分のこの投稿がどこのIPアドレス(インターネット上の住所)からなされたのかの開示を裁判所に求めます。そこから開示されたIPアドレスに基づいてどこの接続業者からアクセスされたのかを調べ、そのプロバイダーを使ってアクセスした人の住所、氏名の開示を裁判所に求めます。
このように、二段階の裁判を経ないと住所、氏名がわからないことが、こういった被害回復を困難にしています。ネットカフェ等の不特定多数が使用できるパソコンから投稿したり、海外のサーバを中継してアクセスするなどした場合には事実上開示は不可能ということもあり得ます。
そのため、現在インターネット上の中傷投稿での責任追及をしやすくしようという動きがあります。例えば2段階認証に使われる電話番号をSNSの管理者に対して求めることができるようにして1回の裁判で加害者を特定することができることが検討されています。
このように、匿名のネットでも被害者が泣き寝入りをせず、責任追及する動きが広がるとともに、ネットでのコミュニケーションに関する教育が広がる必要があります。そうしなければ、ネットを利用して表現をしようという人がいなくなってしまうでしょう。
弁護士 白川秀之(名古屋北法律事務所)
(2020年8月「年金者きた」へ寄稿した原稿を転機しています)