これで学校の先生は救われる?・・・教員の働き方改革
2020年2月18日
<変形労働時間制導入>
昨年12月4日、公立学校の先生たちへの「1年間の変形労働時間制」の導入を中心とする教職員給与特別措置法(給特法)改正が可決されました。1年を通じて比較的忙しい年度始めなどは勤務時間を延長して、その代わりに夏休みなど「余裕がある」(?)時期に休日を増やすことによって、年間を通して労働時間を調整する、というものです。
この問題は、もともとは働き過ぎの教員、疲弊する教員の労働環境を改善する必要がある、という議論が出発点のはずでしたが、全く違う出口に導かれた、という感じで、先生たちの労働環境の改善には何ら役に立たないばかりか、さらに悪化させるものでしかありません。先生たちは夏休みであっても時間に余裕など全くないというのが現状であり、前提が間違っているからです。
<そもそも給特法は何を決めているのか>
公立学校の先生たちは、どんなに残業をしても残業代が支払われない、ということをご存知でしょうか。この仕組みを定めているのが給特法です。
給特法は、原則として教員には時間外勤務を行わせない、と定める一方で、4%の教職調整額を支払う代わりに残業代を払わなくても良いことになっています。とは言っても自発的活動と言われる「例外的な」残業が青天井で存在し、実際には4%の固定残業代で働かせ放題というのが実態です。
そのため先生たちは長時間過重労働で疲弊し、子どもたちに向き合う時間が取れず、現場での矛盾を抱えながら悩んでいます。
<変形労働時間制の意味>
これを改善するために、変形労働時間制を導入するというのは、全くのピント外れと言わざるを得ません。そもそも変形労働時間制というのは、「1日8時間、週40時間労働が原則であり、これを超えて働かせる場合には割増賃金を支払わなければならない」という労働時間規制の例外を作り、年間労働時間を減らさずに残業代を節約したい経営者にとって都合の良い制度です。労働時間の短縮とは全く無縁の制度なんです。
この制度を導入する目的は、ただただ目に見える長時間残業を正当化・合理化して、批判をかわそうとする意図があるとしか考えられません。こんなゴマカシの制度の導入では先生たちの働き方が良くなるわけがないことは自明です。先生たちの健康を守り、子どもたちと向き合う時間を増やすためには、教員の数を増やし、無駄な研修や管理業務を減らして、一人当たりの労働量を減らす本当の改革が必要です。
弁護士 伊藤勤也(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)