あおり運転
2019年11月5日
お盆期間中、あおり運転をした運転手が暴行をしたという動画をニュースでご覧になった方も多いと思います。今回、運転手は傷害罪で逮捕をされましたが、あおり運転行為自体は犯罪とならないでしょうか。
あおり運転の結果、事故を起こし、被害者を負傷、死亡させた場合には危険運転致死傷罪が成立します。被害者が負傷した場合は15年以下の懲役、死亡した場合は最大20年の懲役です。2017年6月5日の東名高速であおり運転によって自動車を停止させられ、追突によって被害者が亡くなった事件では、同罪が適用されました。ただ、被害者が負傷、死亡しない限り、この犯罪を適用することはできません。
また、道路交通法26条は、同方向へ進行する他の車両や歩行者の後ろを進行する際、前の車両などが急に止まったときにも衝突しない程度の車間距離を空けるべきと定めていますので、煽り運転によって前の車との車間距離を詰めすぎると、車間距離保持義務違反となります。
道路交通法違反は、車間距離不保持は高速道路では3か月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道の場合には5万円以下の罰金が課されます。ただ、あおり運転は飲酒運転と同じくらいの危険な運転行為にもかかわらず、刑罰がとても軽いことが問題と言えます。
この他に刑法の暴行罪を適用する事も考えられます。一般に暴行は身体的な接触が必要とされますが、例えば日本刀を間近で振り回す場合のように、身体への危険性の高い行為を被害者が感じる方法で行った場合にも成立します。
いずれにしても、あおり運転に遭遇した場合には、最寄りの交番やサービスエリアに立ち寄るなどの避難が必要であると思いますし、今回の報道で注目されたドライブレコーダーを設置することも有効と言えます。
弁護士 白川秀之 (名古屋北法律事務所)
(「年金者しんぶん」9月号へ寄稿した原稿を転載しています)