夫の定年を前に離婚~退職金の財産分与は?
2017年2月17日
退職金は高齢の夫婦にとって老後の生活の糧となる大切なもの。けれど、夫の退職を前に離婚することになったら――妻は退職金に対して権利を主張できるでしょうか?
退職金が財産分与の対象となる場合
この点、退職金も財産分与の対象とすることが認められています。しかし、退職金が支払われるのは退職のときであり、会社の経営状態や退職理由によっては支払われる保証はありません。そのため、退職金を財産分与の対象とするためには、将来の退職金支給がほぼ確実であると見込まれることが必要になります。
これは会社の就業規則や離婚時点での退職(見込み)者の年齢などを考慮して決められます。この点、たとえば、若い夫婦の離婚で、退職が遠い将来のことである場合には、受け取るかどうかわからない退職金の分与を離婚の段階で認めることは不公平であるとして認められないことが多いです。
退職金の分与の方法
ところで、退職金の支給が見込まれる場合であっても、結婚前に就職した場合、全額が財産分与の対象になるわけではありません。結婚期間(=配偶者が退職金の形成に貢献している期間)に応じた部分のみが対象となります。
分与対象となる退職金の計算方法については、判例では、①別居時に自己都合退職したと考えて、その場合の退職金相当額から結婚前の労働分を差し引いた額が対象となるという考え方、②定年退職時に受け取る予定の退職金から、婚姻前労働分と別居後労働分を差し引き、中間利息を控除して算定する考え方などが示されています。中間利息とは、本来将来受け取るお金を、今受け取ることで利殖ができますから、その利息分を差し引くということです。
個々のケースで、離婚の時点と退職日との関係で、退職金が財産分与の対象となるか、そのうちいくらが対象となるかについては、弁護士へのご相談をお勧めします。
弁護士 裵明玉
(「新婦人きた」へ寄稿)
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