自宅で一人寂しく逝ったGさんのこと、高齢者を食い物にする悪徳訪問業者たちのこと 豆電球No.4
2005年12月27日
私が補助人を務めていたGさん(女性 50代)が、亡くなった。台所で倒れ、死亡しているところを、自宅を訪ねた弟さんが訪ねて発見した。Gさんの預貯金は、補助人である私が管理していたので、両親の遺族年金が振り込まれる度にカードを渡し、決められた金額を引き出してもらって生活費として渡していた。特 に用事もないのに事務所を頻繁に訪ねてきたり、一日に何回も電話してこられるので閉口することもあったが、亡くなられた後、もう少し相談相手になってあげれば良かったと後悔した。
Gさんは、20歳の頃に統合失調症を患った。学校の教師をしていた両親はGさんを残して亡くなられたが、Gさんの事が心配だったのだろう、こつこつと貯金し1億円近い貯金を残された。
両親の死亡後、Gさんの自宅を、訪問業者が入れ替わり立ち替わり訪問するようになった。まず、著名な着物(和服)の訪問販売業者の言うがまま着物、装飾品等を注文し、その累計は6000万円以上にのぼった。それを知った親族が弁護士に依頼し、半分くらいは取り戻したようだ。しかし、その後も、いろんな訪問販売業者がGさんの生活の糧である貯金を、サメが獲物を食いちぎるように奪っていった。これではダメだと以前からGさんの相談を受けていた司法書士が成年後見制度の利用を思い立ち、家裁に申請、同司法書士が補助人に選任された。
その後、同司法書士が、訪問販売業者のセールスマンに取られたお金を取り戻す手続きをして欲しいと事務所に来られ、私が引き受けたのが、Gさんと知り合ったきっかけだった。
私はさっそく訪問販売業者に裁判を起こしたが、ひどい話だった。業者は、Gさん宅を住宅内装工事のセールスのため訪問し、その勧誘行為の中でGさんが某 かの貯金を持っている一方で判断能力に欠けるところがあることを知ったようだ。業者は、Gさんから工事の注文を取っただけでなく、言葉巧みにGさんを騙 し、自分が新しく焼き鳥店を開店する、儲かることは間違いないので開業資金を貸して欲しい等と頼み込み、600万円以上のお金を借り出していった。それだけでなく、業者は、Gさんを栄のデパートに連れて行き、そのカードで20万円以上の鞄を買ってもらうことまでしている。裁判は当然、Gさん勝訴となったが、相手に全く支払能力がなかったため、戻ってきたのは200万円に過ぎなかった。
同裁判後、司法書士から、自分では手に負えないので補助人の引継を頼まれ、私が補助人になった。私が補助人になった時には、Gさんの預貯金は僅かしか残されていなかった。
その後の私の補助人としての仕事の一つは、Gさんが契約させられた訪問販売について、業者にクーリングオフの内容証明郵便を出すことだった。家屋のリフォーム、電話機購入等、様々な業者に通知を出した。
Gさんは、心根の優しいひとだったと思う。お金を貸したセールスマンは、自分と家族の暮らしが大変だと訴え、Gさんは、これに同情してお金を貸したという事情もあったようだ。Gさんは、お金がなくなった後は、キリスト教に関心を持って勉強していたようだ。
社会が荒んだ時、真っ先に犠牲になるのは、高齢者、障害者、弱者と呼ばれるれる人々だ。そんな荒んだ時代の中で、一生懸命生き続けたGさんの生涯は、泥 の中に咲いた蓮の花一輪だったと思う。Gさんは、ミュージカルが好きで、節約しながら貯めたお金で劇団四季の「ライオンキング」を何度も見ていた。今は、 天国で「ライオンキング」を見ているだろうか。
昨今、高齢者に対するリフォーム詐欺、振込め詐欺が社会問題になり、一定の対策が講じられたが、未だ被害が絶えない。高齢者、障害者の間で成年後見制度を一層拡げること、高齢者、障害者に対する不当な訪問販売、人権侵害を許さない取り組みを広げていく必要がある。