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知って得する法律情報

高齢者・障がい者をサポートする制度(4)成年後見の効果 vol.1

2013年4月11日

 今回は、成年後見制度を利用した場合の効果について、いくつかのポイントをお話ししていきたいと思います。

(1)契約の取消し

 まず、成年後見制度を利用すると、本人に不利で不必要な内容の契約を取り消すことができる、ということをご説明しました。契約を取り消す、とはどういうことでしょうか。

 例えば、本人が、自宅の不動産を売却する契約を結んでしまったとします。このとき、登記がまだ相手に移されていないときには、売買契約を取り消します、と相手に通知することにより、登記を移す義務を消滅させることができます。

 また、登記を相手に移転してしまった後であっても、売買契約を取り消すことにより、登記の抹消を求めることができます。「求めることができる」と書きましたが、相手が登記の抹消を頑として拒否してきたときには、裁判によって権利を実現することになります。

 成年後見制度を利用していることの効果は強く、たとえ不動産が転々と売買され、全く事情を知らない第三者が買っていたとしても、元の売買契約を取り消すことにより、不動産を取り返すことができます。なお、代金を受け取っていれば、それは当然ながら返なければなりません。

(2)医療行為の同意

 次に、よく問題となる「医療行為の同意」についてご説明します。

 私たちが病院で治療を受けるとき、病院との間で診療契約を結びます。もっとも、これは治療を受ける、という概括的な契約にとどまっていて、治療の具体的な内容(投薬や手術など)については、その都度、医師からの説明を受けて個 別に同意をしています。

 この同意は、契約などの法律行為ではありませんが、医療行為というものが、副作用や体を切り開くことで場合によっては生命の危険に関わるものであるため、患者自身が自分の体に生じる不利益を理解し納得する、という意味で必要とされています。

 ただ、成年後見制度を利用する方については、本人が必ずしも治療内容の説明を理解し、判断することができない場合があります。そうすると、具体的な医療行為をするには、誰かが本人に代わって同意する必要があります。本来は、本人の体のことは本人にしか決定できないはずですが、治療の必要がある人を、判断能力の低下を理由に放っておくわけにはいかないからです。

 そのため、医療の現場では、配偶者や親、子など本人の近親者に、本人に代わって医療行為の同意をしてもらっています。本人に近しい親族であれば、本人の体力や要望を代弁できるであろうという考慮が働いていると考えられます。

 ただ、家族であればどうして本人の代わりに同意ができるのか、については、実際には法的な根拠は曖昧で、法整備の必要性が指摘され続けています。

 では、成年後見人等に選ばれた人は、本人の代わりに医療行為の同意をできるでしょうか。

 後見人等は、診療契約を代わりに結ぶことはできます。しかし、医療行為に同意する権限は、実はありません。

 しかし、そのために困った問題が生じています。例えば、全く身よりのない方の場合、あるいは親族はいるものの遠縁で本人と会ったこともないという場合、親族が本人と仲が悪い場合など、親族に同意を求めることができない、あるいは適当でない、というケースが少なくないからです。

 成年後見人等に医療行為の同意権も与えるという法整備の必要性も、叫ばれているところです。

(続く)

2013/04/04 弁護士 矢﨑暁子

(ホウネットメールマガジンより転載)

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