債権の回収(14) 債権回収と時効
2011年8月4日
売掛金の請求をしてきたけれど、時効になりそうとか既に時効が成立してしまっている。こんな場合はありませんか。
特に債権回収の時に問題になるのは消滅時効ですが、これは一定期間が経過して債務者がこれを主張すると、権利が消滅してしまうということです。民法では債権の時効は原則10年とされていますが、10年以内の短期消滅時効というものもあります。例えば、商取引に関する商事債権は5年、請負工事代金は3年、飲食店の代金は1年などです。
時効にならないためには、時効を中断する必要があります。
民法には【1】請求、【2】差押え・仮差押え・仮処分、【3】承認の3つが時効中断事由とされています。
ここで一番勘違いしやすいのが【1】請求です。請求だから請求書を送り続ければいいと考えると、大変です。【1】の請求は、主には裁判上の請求が必要で、単に請求書を送るだけでは「催告」にしかなりません。
一方、【3】の承認は、債務者が弁済をしてくれるなどでもいいのです。ですので、一部でも支払ってもらっている間は時効の心配をする必要はありませんが、支払が止まったあとは、単に請求書を送るだけではだめで、何らかの法的手続が必要とお考えください。法的手続を準備するにも明日が時効とかでは、どうにもならないケースもあるので、時効には注意をして、余裕を持った対応が必要になります。
さて、では、既に時効が完成してしまっているという場合はどうでしょうか。
この場合にも、債務者が時効を援用しなければ、自動的に権利が消滅するわけではありません。したがって、時効期間が経過していても、債務者がこれを援用しない限りは、請求を出したり、債務承認書をもらったりすることは構わないわけです。
時効期間が経過していても、弁済をしてもらえたり、債務承認書にサインをもらえれば、時効はまたリセットされるわけです。この辺りは交渉の腕の見せ所ですね。
ただ、やはり、時効には注意というが一番です。時効は10年とは限らず、意外と短いものもありますので、その点も確認しましょう。
2011/8/4
弁護士 加藤 悠史
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)