交通事故(1)〜請求の相手方、損害の種類(概要)
2011年5月13日
交通事故(1)
―請求の相手方、損害の種類(概要)―
交通事故による死者数は減少傾向にあるものの、警察庁の発表によっても交通事故発生件数はまだまだ減っていません。不幸にして交通事故被害に遭った場合、誰に対して、どんな賠償請求ができるかということが大事な問題です。
今回から6回にわたって、交通事故被害に遭った際に知っておくべき基本的なことについてご説明します。
第1回の今回は、請求の相手方、損害の種類(概要)等についてです。
1 請求の相手方(責任負担者)
交通事故によって生じた損害について賠償請求していく相手として、加害者本人は当然ですが、業務上の自動車運転による事故の場合にはその使用者(会社や事業主 民法715条)も加害者と同様の責任を負うことになります。
また、人身事故の場合には、自動車損害賠償補償法(自賠法)という特別法があり自動車の保有者にも運転者と同じ責任を負わせることになっています(同法2条、3条)。
したがって、賠償請求の相手方としては、加害者のほかに使用者や自動車の保有者も含めることができる場合があるということです。
とは言っても、通常は任意保険の保険会社が代理人として交渉を行いますので、本来の責任負担者と直接交渉することはほとんどありません。この場合の保険会社担当者はあくまで会社の業務としてやっていることなので、委任事務処理として機械的な対応をすることが間々あり、そのことがさらに被害者の感情を逆撫ですることが多いのが問題です。保険会社の担当者の方にはもっと被害者の感情を慮った対応をしていただきたいと思わざるを得ません。
2 損害の種類
次に請求できる損害の種類ですが、詳しくは次回以降で説明するとして、今回はアウトラインをご説明します。
損害の種類を大きく分けると、身体に被った損害である「人身損害」と自動車等の物が破損したことによる「物的損害(物損)」があります。
このうち人身損害には財産的損害と精神的損害があり、この精神的損害が一般に「慰謝料」と呼ばれるものです。
さらに細分化すると、財産的損害の中に、治療費等実際に出費が必要となった費用相当の損害(積極損害といいます)と、休業損害等得られるはずの収入が得られなくなったことによる損害(消極損害といいます)があり、この積極損害と消極損害の中にいろいろな項目の損害が含まれることになります。
この損害の算定(確定)が交通事故損害賠償請求の中で一番困難な課題で、多くの論点を含みますので、詳細は次回以降とします。
2011/5/9
弁護士 伊藤勤也
(ホウネットメールマガジンより転載)
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(連載の他の記事は下記のとおりです)
交通事故(2)〜自賠責保険と任意保険
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