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知って得する法律情報

中小企業と交通事故の深い関係(2)

2011年1月30日

「―社員が交通事故に遭った場合―

 今回は、社員が交通事故を起こした場合の会社の責任です。この場合、社員が加害者となる場合、被害者となる場合の双方が考えられますが、今回は前者を取り上げます。

 社員が会社の社用車を運転して業務に従事している時に交通事故を起こした場合に、会社に損害賠償責任があることはご存じと思います。この場合、会社の賠償責任の根拠は二つあります。

第1 自動車運行供用者としての責任
 自動車損害賠償保障法は、「自動車を自己のために運行の用に供する者」=運行供用者が賠償責任を負うことになっています。会社所有の自動車ではなく従業員の所有車両を業務に使用させていた場合にも、会社は運行供用者としての責任を負担することになります。
自動車の「運行供用者」とは何かという問題は、実は簡単な問題ではなく、例えば、社員が勤務時間外に私用で会社の保有自動車を運転して事故を起こした場合でも、会社が私的使用を黙認していると認められる事情かがある場合や車両の管理が杜撰である場合等には、会社が運行供用者責任を負うこともあります。

第2 使用者責任
 民法715条は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に損害を加えた場合」には、使用者が損害賠償責任を負うとしています。
この規定は、会社のリスク管理を考える上で不可欠の規定であり、交通事故にとどまらず被用者の起こした不法行為については、業務との関連性がある限り会社が賠償責任を負うことを銘記する必要があります。この業務との関連性については、判例は外形標準説という考え方に立っており、業務そのものではない場合でも責任が認められる場合があります。重要なのは、社員がマイカーを使用して通勤中に事故を起こした場合にも、会社の運行供用者責任が認められるケースがあるということです。
会社の責任の有無は、以下の要素が影響します。
(1) 全く通勤にのみ使用し、社用に使用していないか。
(2) 職務の性質上マイカーで通勤の必要があるか。
(3) そのことにより直接的にも間接的にも会社が何らの利益を得ているか。
(4) ガソリン代や修理代の負担などマイカーの運転を助長する措置を会社が取っていないか。

 この判断はケースバイケースで行われます。そこで、会社のリスク管理としては、上記の4つの要素を念頭においた対策とともに、自衛策が必要です。少なくとも、社員のマイカー通勤を認める場合には、充分な損害保険に加入することを絶対条件とし、損害保険証のコピーを提出させる等厳しく管理すること、飲酒運転をしないよう、厳しく指導すること、忘年会等の宴会があるような時は特に注意すること、定期的に、安全運転講習会等、安全教育を行うこと等が求められていると考えます。

2011/1/21
弁護士 長谷川一裕
(ホウネット中小企業メールマガジンより転載)

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