離婚給付について(4)
2010年10月4日
離婚給付について第4回目の今回は,離婚時年金分割制度を説明します。
1 制度概要
離婚時年金分割制度というのは、平成19年4月から施行されている制度で、配偶者(主に夫と思われる)の厚生年金加入期間にかかる標準報酬を当事者間で分割する制度です。この制度には、平成19年4月1日から適用される「合意分割」の制度と、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間について適用される「3号分割」とがありますが、今回は主に「合意分割」の制度について説明します。
2 背景と目的
このような制度が導入された背景には、熟年離婚した場合の女性(特に長年専業主婦をしていた方)の年金受給額があまりに低く、「サラリーマンの生活を支えてきた妻の貢献が年金に反映されていない」とか「高齢独身女性の離婚後の貧困生活が社会問題にもなっている」などの声が聞かれていたことがあります。そこで、婚姻中の夫の年金保険料は夫婦共同で支払っていたものと考え、その一部を離婚後の妻の独自の給付対象とすることが考えられたのです。
3 分割内容
老齢厚生年金の額は、厚生年金加入中の標準報酬月額に基づいて計算されるわけですが、分割されるのは、この計算の基礎となる「標準報酬」と言われるもので、婚姻期間中の標準報酬が多い方から少ない方に対して、標準報酬を分割することになります。たとえば、婚姻期間中の夫の標準報酬が1億円で、妻がゼロ(全期間家事専業)の夫婦の場合に、分割割合50%だとすると、夫も妻も標準報酬は5000万円となり、これに基づいて計算された老齢厚生年金を受給することになります。年金分割制度がなければ、妻の老齢厚生年金はゼロとなるところです。
4 手続
合意分割は、当事者の合意(または合意できないときは裁判所の判決等)によって分割割合を定め、それに従って当事者が請求することになります。お届け先は各年金事務所になりますが、請求書用紙などもそちらにありますので、手続きについては年金事務所へお問い合わせください。
2010年9月22日
弁護士 伊藤勤也
(ホウネットメールマガジンより転載)
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(連載の他の記事は下記のとおりです)
・離婚給付について(1) 概論
・離婚給付について(2) 財産分与
・離婚給付について(3) 慰謝料
・離婚給付について(5) 付随問題〜婚姻費用分担
・離婚給付について(6) 支払確保の方法等
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