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知って得する法律情報

離婚時年金分割を知っていますか?

2025年2月18日

 最近「年金分割なんてまったく知らなかった」という離婚の相談者に立て続けに出会いました。まだまだ制度が浸透していないことを実感したため、こちらで取り上げることにしました。

 離婚時年金分割とは、厚生年金、共済年金につき、婚姻期間中の保険料納付実績の多い配偶者(多くは夫)から他方配偶者(多くは妻)へ、保険料納付実績を分割する制度です。離婚時に夫婦の一方が納付した保険料の一定割合を、分割を受ける人が納付したものとして記録を付け替えることにより、分割を受けた人が受給する年金の金額が上がります。専業主婦やパート主婦が離婚して夫の扶養を受けられなくなった場合に、貧しい生活を余儀なくされることがないようにと作られた制度です。

 年金分割には「合意分割」と「3号分割」があります。「合意分割」は、夫婦の双方が年金分割及びその分割割合について合意して行います。分割できる割合の上限は、50%とされています。合意ができない場合には、夫婦の一方が裁判所に申立て(調停、審判)をして、裁判所で按分割合を決定することができます。裁判所では、原則として按分割合を50%とする取り扱いがされています。当事者間の合意または裁判所の手続により、分割割合が定まった場合、夫婦であった者の一方が、住所地を管轄する年金事務所で所定の請求書を提出して年金分割の手続を行います。

 「3号分割」は、2008年4月以降に夫婦の一方が第3号被保険者であった期間について、他方の保険料納付実績の半分を自動的に分割できる制度です。夫婦間の合意は不要で、請求すれば当然に分割されることになります。2008年4月以前に結婚しており、2008年4月までの間の部分についても分割を受けたい場合には、合意分割制度に基づいて、分割の割合を決める必要があります。

 年金分割の手続きは、原則として離婚(事実婚の解消を含む)の翌日から2年以内に行う必要があることに注意が必要です。また、年金分割をするためには、「年金分割のための情報通知書」を、住所地を管轄する年金事務所又は共済組合に請求する必要があります。その際に希望すれば、50歳以上または障害年金受給権者は、年金分割後の年金見込額を知らせてもらえます。熟年離婚をお考えで、年金分割で年金がどれくらい増えるか気になる方は、まず情報通知書を取得してみましょう。

弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています

 

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