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知って得する法律情報

遺言書保管制度を知っていますか?

2024年11月18日

 遺言書には大きく分けて、遺言者が自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証人が作成する「公正証書遺言」があります。
 自筆証書遺言は費用を掛けず手軽に作成できる反面、紛失したり、遺言者の死後誰にも発見されないリスク、さらには偽造変造や隠匿されたりするリスクがあります。また、遺言者の死後、すべての法定相続人に通知の上、家庭裁判所で「検認」の手続きをしないといけません。検認とは、相続人らに遺言の存在及び内容を知らせ、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。封がされた自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認期日まで開封することは許されません。
 公正証書遺言の場合、公証人が作成、保管するので、偽造変造や紛失の可能性はなく、検認も不要ですが、公証役場に支払う手数料がかかり、証人2名が必要です(有料になりますが、公証役場に手配を依頼することも可能です)。

 このように、自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれに長短があるなかで、自筆証書遺言のデメリットを軽減する制度として、2020年7月より、法務局での遺言書保管制度が導入されました。
 遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局(遺言者の住所地/本籍地/不動産の管轄法務局のいずれか)に預け、法務局が画像データ化して保管する制度です。相続人は、遺言者の死亡後、全国どこの法務局でも遺言書の内容の閲覧ができます。
 遺言書保管制度を利用すると、①保管申請の際、法務局の職員が遺言の形式面をチェックしてくれるため、形式ミスによって遺言が無効になることを防げます。また、②法務局が保管することによって、偽造や変造を防ぐことができますし、③法務局が遺言者の死亡を確認した場合、遺言の保管の事実が、申請時に指定した相続人等に通知されます。そのため、遺言が見つからないまま執行されないという事態を防ぐことができるのです。さらに、④法務局に保管されている遺言については、家庭裁判所の検認も省略することができます。保管手数料も1件3900円と、公正証書遺言と比べて安価で、利用しやすくなっています。

 ただし遺言書保管制度を利用できる遺言書は、民法のルールに加え、保管制度の求める様式を満たす必要があります。また、保管制度を利用する際には、事前予約をして、遺言者本人が必要書類を添えて、申請手続きをする必要があります。比較的新しい制度ですが、関心は高く、遺言書保管制度を利用したい方のご相談も増えています。手続や様式については、法務省HP「自筆証書遺言書保管制度」のページに詳しい案内がありますので、ご興味のある方はご覧になるといいでしょう。

弁護士 裵明玉(名古屋北法律事務所)
「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています

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