夫婦別姓について考える
2024年9月2日
2024年6月10日、経団連が、はじめて「選択的夫婦別姓」の導入を求める提言をとりまとめたというニュースがありました。今年の3月には、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法に違反するとして、12人の方が国に賠償などを求める訴えを起こしています。
夫婦別姓を巡っては、過去にも2度、最高裁判所大法廷で判断がされました。いずれも合憲という結論でしたが、判決では、「制度のあり方は国会で論じられ判断されるべきだ」とされていました。
法務省の調査では、他国で日本のように同姓を義務付けている国はなかったということです。他方で、日本では、結婚するときに夫の名字を選択した夫婦の割合は、40年以上、94%を上回っています。こうした状況について、国連の女性差別撤廃委員会は、夫婦別姓を認めない日本の民法の規定について「女性に対する差別的な法規制だ」として、速やかに改正するようたびたび勧告しています。
憲法24条で定められた婚姻の自由や憲法14条の平等権、憲法13条の自己決定権を保障するためにも、いい加減、選択的夫婦別姓くらい導入しても不都合はないでしょう。経団連でも、不平等を是正しない国には投資や人材を呼び込むことが難しいことなどを挙げ「国際的な信用性や競争力を高めるためにも選択的夫婦別姓の導入は急務だ」とするなど、国際的な人権問題として認識されているのです。
最高裁判決が国会で議論すべきとしてから9年がたっていますが、国会では根強い反対論があり、制度の在り方が論じられている状況とはいえません。反対派からは、「家族の一体性が失われる」とか、「子どもがかわいそう」ということが言われます。
実は、私は、加藤は通称で、戸籍名ではありません。子どもたちの姓は加藤ではありませんが、「パパは仕事の時は加藤なんだよ」と理解しています。だからといって、そのことで家族の一体性を失ったと感じたことはありません。子どもがかわいそうというのも余計なお世話としか感じられません。そういう人は、同姓を名乗ることもできるのが、「選択的」夫婦別姓なんですから、それぞれの選択を尊重できる制度にして欲しいものです。
弁護士 加藤悠史(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています