デジタル給与の解禁
2023年5月16日
年度が替わり4月から様々な新しい制度の運用が開始しています。
国のキャッシュレス決済推進の流れで、2023年4月から給与のデジタル払いが解禁されました。これによって、電子マネーで給与を支払うことが可能になります。労働基準法は、使用者は労働者に対して、給与を通貨(現金を意味しますが、銀行口座への振込は認められています)で、直接、全額、毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならないと規定しています(賃金払いの五原則)。この原則を維持しつつ、デジタル給与は、銀行口座への振込ではなく、使用者が持つ資金移動業者の口座から、従業員の持つ資金移動業者の口座へ資金を移動することによって支払われます。イメージしやすいのは、スマートフォンアプリを使用した〇〇ペイなどのキャッシュレス決済口座です。若い世代では日常生活のほとんどをキャッシュレス決済ですませるという人も多いそうで、採用難の時代、デジタル給与の導入で人材確保に繋がるメリットがありそうです。他方で、使用者側からみると、給与の支払方法の多様化で、人事管理業務増加に繋がってしまうかもしれません
なお、デジタル給与を利用するためには、使用者と労働者が労使協定を締結し、労働者から個別に同意を得ることが必要になります。また、4月から順次、資金移動業者がデジタル給与取扱業者の指定を受けるために申請手続を国に行っているので、業者の指定を経て、実際にデジタル給与での支払が開始するのはもう少し先になりそうです。
弁護士 中島万里(名古屋北法律事務所)
(「名古屋北部民商ニュース」へ寄稿した原稿を転機しています)