その遺産どうなる・どうする?
2023年4月17日
最高裁判所によると、相続人がいないなどの理由で国庫に入った財産の額が、2021年度は約647億円となり、過去最高額となった旨の報告がされました。
まずは、どういうことなのかが分からない方のために、概要を説明します。
ある方が亡くなった場合、その遺産は配偶者や子供、親や兄弟姉妹などの相続人に引き継がれることになります。また、遺言書があればその内容に従い、遺産は引き継がれることになります。
しかし、もともと相続人となる身内がいない場合や、相続人となる人が相続放棄をしたりすると、相続人が誰もいないという状態になります。そうなった場合の遺産がどうなるかというと、相続人が本当にいないと確認され、「特別縁故者」といって、亡くなった方と特別の縁故関係にある人の申し出もなければ、法律上、最終的に遺産は国庫に入るとされています。
つまり、2021年度は、上記の経過をたどって、国のものになった遺産の額が過去最高額に達したということです。
このような背景には、相続人となる家族がいない「おひとりさま」の相続が増加していることが一つの要因に挙げられます。しかし、仮に相続人となる人がいないとしても、上記に触れたように「遺言書」があれば、遺産の引継ぎ先を指定することができます。
例えば、相続人の関係にないが、とてもお世話になった人がいて遺産を渡したいということであれば遺言書で遺贈を記載しておくべきです。お世話になった人自身が特別縁故者であると申し出たとしても当然に認められるわけではありません。また、単に国のものになってしまうくらいなら、社会的に貢献している団体に寄付したいといった意向があれば、その意向を実現するために遺言書を作成しましょう。
遺言書を作成するとなると、どうしても、相続人にどのように財産を引きつがせようかということに着目されがちですが、相続人がいない場合であっても自分の意思を実現させるために遺言書を作成すべきです。
弁護士 新山直行(名古屋北法律事務所)
(「新婦人北支部・機関誌」へ寄稿した原稿を転機しています)