文字サイズ 標準拡大

損害賠償請求について

交通事故による損害には
「人損」と「物損」の2種類があります。

交通事故の損害賠償請求において最大の争点は、損害です。

何をもって損害賠償の対象となる損害とし,どのように金銭的評価を加えるべきかということについては,法律に基準が設けられているわけではありません。そのため、損害は大きな争点となります。

この損害の判定は、これまでの裁判例や解決事例の蓄積によって、ある程度の基準が設けられています。したがって、実際の損害賠償請求においては、その判断基準に従い、損害を認定して金銭的評価をすることとなります。

人身損害(人損)における損害の種類と意義

交通事故により被害者が負傷または死亡した場合の損害を「人身損害(人損)」といいます。人身損害は、「財産的損害」と「精神的損害」に分けられます。

財産的損害とは、事故によって被害者に生じた財産的・経済的な不利益を言い、財産的損害は、さらに「積極損害」と「消極損害」に分けられます。

積極損害とは、被害者が事故のために出費を余儀なくされたことによる損害を言い、消極損害とは、被害者が事故に遭わなければ得られたであろう利益を失ったことによる損害をいいます。

図:人身損害(人損)における損害の種類

人身傷害に関する損害

財産的損害 積極損害 傷害が治癒または症状固定となるまでの間に発生した、治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費等
消極損害 傷害の治療期間中の休業のために収入を失ったことによって発生する休業損害
精神的損害 事故によって受けた苦痛に対する賠償(傷害慰謝料)

後遺障害に関する損害

財産的損害 後遺障害が生じ、労働能力の喪失がある場合には、将来、労働によって得られたであろう収入を得られなくなるという損害が生じます。これが後遺障害による逸失利益です。
精神的損害 後遺障害が生じたことにより、被害者の苦痛は将来にわたって継続することにより、障害慰謝料とは別に後遺症慰謝料が認められます。

死亡したの場合の損害

この場合には、被害者の相続人が代わって請求を行うことになります。

財産的損害 積極損害 葬儀費
消極損害 被害者が生存していれば将来労働によって得られたであろう収入を得られなくなったことによる損害(死亡逸失利益)
精神的損害 被害者の死亡慰謝料とともに被害者の近親者には、被害者の死亡により被った精神的損害について固有の慰謝料請求が認められています。

物的損害(物損)における損害の種類と意義

交通事故により車両に損傷を受けたことにより生じる損害を、「物的損害(物損)」といいます。

物的損害には、以下のようなものがあります。

図:物的損害(物損)における損害の種類

修理費

車両の修理が物理的にも経済的にも可能な場合には、修理費相当額が損害として認められます。修理費の認定は、自動車修理工場の見積書や請求書から行われます。

もっとも、修理費は「相当」なものでなければならず、過剰な修理費用は認められません。たとえば、損傷を受けた部分だけでなく全面塗装を行った場合には、その相当性が争われることが少なくありません。

経済全損

上記で「経済的にも可能な場合」と述べましたが、修理費用が車両の時価等を超えている、いわゆる経済全損に当たる場合には、車両損害として認められるのは、修理費用ではなく、車両の時価等に限定されます。

ただし、特段の事情がある場合には、例外的に車両の時価を超える修理費が損害として認められる余地があります。たとえば、被害車両と同種同等の車両を中古車市場において取得することが困難な場合などがこれに当たります。

評価損(格落ち損)

車両を修理しても、車両の機能や外観が修復されなかったり、あるいは、修復していても事故歴が残るなどにより売却価格が下がるような場合に、いわゆる「評価損」が損害として認められるかが問題となります。

評価損が認められるか否かは、修理の程度、車種、登録年度、走行距離等を考慮し、修理費用を基準に判断される傾向にあります。

代車費用

修理期間中、あるいは新車買換え期間中に、代わりの車両を使用した場合、その代車費用が損害として認められる場合があります。

代車費用が認められるためには、代車を使用する必要性があり、現実に使用したことが必要です。また、代車の使用が認められる期間は、修理可能な場合には修理に必要な期間、買換えの場合には買換えに必要な期間が基本となります。

休車損

休車損とは、事故のために車両が使用できなくなった場合、その期間、使用できていれば得られたであろう利益に相当する損害をいいます。この休車損は、主として営業用車両の場合に認められます。

ただし、代用できる遊休車両がある場合や代車費用が認められる場合などには、休車損は認められません。

その他について

事故により車両が損傷した場合には、その処理に当たり種々の費用(車両保管料、レッカー代、時価査定料など)が必要となりますが、これらの雑費も、事故と相当因果関係が認められるものについては損害といえます。

また、車両が修理不可能なために車両の買換えを行った場合は、買換えに必要な諸費用(たとえば、自動車取得税、車庫証明費用、廃車費用など)も損害となります。

なお、物損については原則として慰謝料は認められません。

このページの先頭へ