少年法の厳罰化について
2014年6月13日
少年法の「改正」についての報道がありましたが、気が付かれたでしょうか。4月11日に成立した新しい少年法は、5月中にも施行される見通しとのことです。
◆成人の処罰等に近づく◆
今回の「改正」の第一のポイントは、厳罰化。たとえば、罪を犯した少年に言い渡す有期刑(懲役や禁錮)の上限を、現行法の15年から、20年にまで引き上げました。また少年法では、成人のような「裁判」ではなく、「少年審判」が原則ですが、審判の適正化の観点から、審判に検察官が立ち会う対象を大幅に広げ、これに対応して、国の費用で付添人として弁護士をつける「国選付添人」が参加する機会も増やしました。検察官と弁護士が参加することで、少年審判も「裁判」と似たような構造になりました。今回の改正によって、少年の刑罰や刑罰を決めるための手続きは、ぐっと成人のそれと近づきました。
少年法の厳罰化は、犯罪被害者団体などからの強い要望を受けたものだとされています。被害者のことを考えると、加害者が少年だったために、成人と処罰が異なることは納得できないという気持ちも分からなくはありません。
◆教育要素があった現行少年法◆
では、現行少年法が、成人と少年とで手続きを分けたのはどうしてだったのでしょう。
それは、少年の犯罪は、少年が未熟であるがゆえに行われたものが多く、審判や少年院などでの教育次第で更生できるという、人間の「やり直せる力」を信じて作られた法律だからです。少年法上の刑罰は、懲らしめというよりも、教育の要素が強いものだったのです。
これまでの少年法には、きちんと社会性を身に着ける機会を持てなかった少年自身も、ある意味では被害者なのだ、社会が教育して育てていくのだ、という視点があったように思います。
◆なぜ今、厳罰化必要か◆
少年事件はセンセーショナルな報道をされがちですが、実際には、犯罪の質・量ともに減少傾向を続けてきました。今回の厳罰化は、被害者の声に押されたふりをして、短絡的に異物を排除して秩序の維持を図ろうとしてはいないでしょうか。
なぜ今、厳罰化が必要なのか、もっと議論する必要があったのではないかと思います。
2014/5/2 弁護士 山内益恵(やまうちますえ)
(「新婦人きた」へ寄稿)