裁判員制度が始まりました。
2009年5月22日
Q 裁判員になった人は何をしなければならないんですか。
A 裁判員になった人は、職業裁判官と一緒に刑事裁判の審理に立ち会い、事件を評議します。裁判員は、被告人が犯罪を犯したかどうかだけでなく、法律の適用、刑をどうするかと言うこと(量刑)についても決めます。
Q 犯罪の認定するなんて訓練を積んでいない素人に出来るんですか。
A 職業裁判官のみが行ってきた裁判では99.9%という高い有罪率であり、被告人の有罪が前提となった、捜査機関の捜査を信用する裁判でした。裁判員裁判はこのような司法を変えるために登場しました。訓練を積んでいない一般の国民の良識を反映することがむしろ期待されているのです。
Q 被告人が有罪であるのかどうかはどう判断するんですか。
A 被告人は裁判で無罪が推定され、有罪を証明する責任は検察官にあります。有罪であるということを「合理的な疑いがない」ほどに証明できなければ有罪とはなりません。「合理的な疑いがない」とは言い換えれば「有罪であることが間違いない」と言える状態です。「疑わしきは被告人の利益」と言う原則があり、疑わしい場合には被告人の有利に判断(無罪判断)をしなければなりません。
Q 被告人が捜査段階で自白をしている場合には有罪ではないんですか。
A 自白は「証拠の女王」と言われ、一見すると有罪が強く疑われます。ただし、自白が捜査機関にとって魅力的であるため、捜査機関が自白を獲得するために過酷な取調べをしかねません。そのため、自白は補強する証拠がないと被告人を有罪に出来ない、任意になされていない自白は証拠とすることができないのです。
Q 日本の捜査機関がそんな過酷な取調べをするんですか。そんな取調べはテレビドラマだけの話ではないのですか。
A いいえ。鹿児島県志布志市の公職選挙法違反事件で、被疑者を1年以上にわたって身柄拘束し、踏み字をさせるなど、過酷な取調べをしたことが明らかになりました。富山県氷見市の事件では「家族が見放している」と嘘を捜査官に言われて虚偽の自白をした被告人が有罪となり真犯人が判明するという事件がありました。決してドラマだけの話ではありません。
Q どうして刑事裁判では、そんなに厳格に判断するんですか。犯罪者を逃がすことになってしまいませんか。
A 厳格な手続が要求されたのは国家が刑罰権を行使して無辜(むこ)の被告人を処罰してきたという歴史に由来します。刑罰権は国家の人権侵害の最たるものです。いいかげんな裁判で無実の被告人が有罪とされてしまっては国家が刑罰権を使って不都合な国民を処罰することが出来てしまいます。
こうした厳格な原則が登場したことで、自白に頼らない、科学的な捜査が発達してきました。刑事裁判の原則で犯罪が助長されたりするわけではありません。
Q 執行猶予判決では被告人は反省しないし、被害者も納得しないから、有罪である以上は、刑務所に入れて更生させなければならないのでは?。
A 刑罰の目的を何に求めるかということにも関わってきます。日本では、単に、やったことに対する報い(応報)と言うだけではなく、再び犯罪を犯さないようにする教育という側面があります。そのため、被害者の気持ちや社会に対する見せしめ的な面だけで、刑罰を決めてはいけません。また、刑務所に入れて社会から隔離することが、被告人の更生に必ず役立つというわけではありません。罪を犯した人を更生させ、再び犯罪を犯せないようにすることも社会一般の犯罪抑止の観点から重要です。刑罰を決めるにあたっては被告人の更生に役立つかという観点も考慮する必要があります。