借地借家問題(1) 退去時の原状回復義務について
2011年2月24日
借地借家問題(1)
―退去時の原状回復義務について―
3月は引越のシーズンです。これまで住んでいたところを退去して新しい部屋で新生活を始められる方もたくさんいると思います。今回は、それまで住んでいた建物を退去する際の原状回復義務についてお話ししたいと思います。
建物を退去する際、大家さんから建物を元に戻す際の費用、例えばクリーニング代やクロスの張替代などを請求されたり、敷金から引かれたりします。では、このような費用はどんなものでも払わないといけないのでしょうか。答えはノーです。
国土交通省の出しているガイドラインでは、借りていた人がわざと汚したり、不注意で汚したり壊したりするものはその費用を負担しなければなりませんが、経年変化や通常の使用による損耗等の修繕費用は負担しなくても良いとしています。そのため、一般的には以下の費用は借りていた人は負担しなくても良いとされています。
・家具による床やカーペットのへこみ
・日焼けによる畳やフローリング、壁の変色
・クリーニングで除去できる程度のタバコのヤニによる壁・天井の汚れ
・テレビや冷蔵庫等の後ろの壁の黒ずみ
・ハウスクリーニング
・壁に貼ったカレンダーやポスター等の画鋲の穴
・エアコン設置による壁の跡やビス穴
・鍵の交換(ただし借主が鍵を破損や紛失した場合は借主側の負担)
契約書で修繕費用を無条件で敷金から引くと決められている場合でも、多くの裁判でそのような特約が無効としています。そのため、原状回復でトラブルになった場合、是非一度弁護士に相談されることをお勧めします。
2011/2/8
弁護士 白川秀之
(ホウネットメールマガジンより転載)
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(連載の他の記事は下記のとおりです)
・借地借家問題(2) 大家さんからの条件変更通告について
・借地借家問題(3) 更新料制度について
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